ダイヤモンド/ライク/カーボンの頭文字を取ってDLCと呼んでいます。 光輝くダイヤモンドと真っ黒なグラファイト(黒鉛)は、同じ炭素原子から作られています。しかし、炭素原子の結合の仕方が異なるため、その見かけも特性も全く異なります。 ダイヤモンドは、最も固い物質で研磨材などの工具として使われていますが、グラファイトは、軟らかく薄く剥がれ易いので、粉末は滑らかで潤滑材に用いられています。 ダイアモンドは、炭素原子のsp3結合からなる結晶構造をしています。 DLCはその中間的な物質で、水素を含んでいます。結晶状態と水素量、置換生成物により幅広い特性を示します。
DLCは無機質ですが、特徴のある性質を持っています。 硬い・・・SUSや超鋼合金よりもずっと硬い(Hv:1000~2000) 超低摩擦・・・非常に低摩擦係数で潤滑性(μ:0.1~0.2) 耐摩擦性・・・非常に磨耗しにくく磨耗汚染がない(相手材を攻撃しない) 耐食性・・・不活性で錆びない(酸アルカリに犯されない) 酸素・紫外線バリア・・・酸素や水や紫外線を通さない 絶縁性・・・106~1012Ω・cm(ダイヤとカーボンの中間)
口窒素、カーボン、フッ素のイオン注入のみで表面を高機能化が可能 口密着力に優れたDLC成膜が可能 口離型・撥水DLC成膜が可能 口20μmの厚膜が可能 口立体・大面積部品でも均一成膜が可能 口非鉄金属へも高密着成膜が可能 口ゴム・プラスチックへも高密着成膜が可能
口高密着な膜を形成 イオン注入によるミキシング層(混合層)形成効果で強固な膜の密着強度が得られます。 口低音プロセス イオンの加速エネルギーにより低音成膜を可能にしました。
口原理 表面処理をしたい部品(基材)に高周波電圧をかけてプラズマを発生させます。次に負の高電圧パルスを印加し、電圧を制御することで、基材の周囲にあるイオンを注入し密着性を向上させます。 低電圧パルスでカーボンイオンを堆積しDLCを成膜します。 口特徴 基材の形状に沿った、均一なプラズマ形成 基材に直接高周波を印加するため、基材がアンテナとなり、基材の形状に沿った、均一なプラズマが生成されます。
口絶縁シート/フィルムへのDLCコーティング 平板電極に絶縁シート/フィルムを密着させ、電極に負パルス電圧を印加することによりDLCコーティングされます。絶縁材料にイオンが注入・成膜することにより正の電荷が帯電しますが、パルス電圧がゼロの時、電極周辺にあるプラズマが電極に接近してきて、正の電荷はプラズマ中に拡散してゼロになり、再びパルス電圧が印加された時DLCが繰り返し成膜されます。 口簡単な絶縁立体形状物へのDLCコーティング 絶縁立体形状物に正パルス電圧を印加すると、マイナス電荷を持った電子が絶縁材料に付着します。あたかも絶縁材料は電子が付着して金属材料の様相を示します。次の瞬間負パルスを印加すると、金属様相をした絶縁立体系にイオンが注入・成膜され、DLCがコーティングされます。
マイクロ溝にはプラズマが生成されないのでDLCが成膜できません。マイクロ溝にプラズマを生成するには正のパルス電圧を印加して溝に電子を供給する必要があります。
コーティングサービスに使用している装置(1,2,4号機)の性能と用途を示します。装置は真空チャンパー、高周波電源、パルス電源、制御盤から構成されます。 基材の大きさ、膜質、材料、形状によって装置が選ばれます。
口ゴム分野:耐摩耗性、摺動性、ガスバリア性、耐固着性、無潤滑 >ゴムロール、ゴムOリング、ゴムパッキング、ゴムシート 口樹脂分野:耐摩耗性、摺動性 >シリコンキャリア、バイオMEMS、タッチパネル 口非鉄金属分野(アルミ、ニッケル、チタン等):摺動性、潤滑性、耐摩耗性、耐食性、ガスバリア性、耐固着性 >エンジン部材、補機部品、複雑形状部材 口鉄系分野:摺動性、潤滑性、耐摩耗性、耐食性、ガスバリア性、耐固着性、無潤滑 >シリコンキャリア、研磨用ドレッサー、輸送・摺動部材、搬送ロボット 口マイクロ部材分野:耐磨耗、離形性 >マイクロ金型 口導光板・光分野:高輝度、面光源 >導光板、面照明
基材により密着強度は異なります ゴム、樹脂の場合ピール試験でDLCの剥離をチェックします。180度の曲げ試験での剥離試験でのチェックを行います。 口金属、非鉄金属の場合・・・スクラッチ試験での密着強度を測定します。 口アルミの場合・・・15N以上 口ステンレスの場合・・・20N以上 口SKDの場合・・・20~40N 口超硬(WC)の場合・・・30~60N
各種硬質膜の摩擦係数、磨耗の深さ(耐摩耗性)を示します。
従来スッパター法でコーティングされ、金属粒子で膜が形成されるので、どうしてポーラス(空孔)はさけられません。PIA-DLCはプラズマの原子、分子で膜が形成されるので基本的にはポーラスはありませんが、真空容器内の不純物(水分子、粒子)が膜に混入してDLC膜成長にイレギュラーを与えポーラスを形成する ことがあります。耐食性は従来の2~3桁向上します。5μm以上の膜厚があれば耐食性にまず問題がありません。
離形性の良い材料はテフロン(PTFE)です。これに一歩でも二歩でも近づこうとするのがフッ素化DLCです。 DLC中の水素原子をフッ素原子に置換して撥水性を向上させます。
PETフィルムにDLC膜厚を変化させて成膜したときのH20、O2ガスの透過量を下記に示します。DLCはガスバリア性に優れていることが解ります。
DLC成膜した各種ゴムの摩擦係数変化を下記に示します。摩擦係数が一桁以上、下がることが解ります。すべすべした表面になります。
六価クロムメッキは公害の対象になり使用が禁止されています。公害の対象になっていない三価クロムメッキは硬度が低く、耐摩耗性に劣るが、窒素イオン注入すると硬度が増し、耐摩耗性が改善されます。
導光板とはアクリル板の下面にマイクロ加工した溝に、板の端面から入れたLED光をあて、板の上面から面発光させたものです。今回開発をした導光板は溝形状を円錐状にすることにより光を上面から垂直に均一に出せるようにして、プリズムシートを不要にしました。またNi電鋳マイクロ金型にF-DLCを成膜することにより耐摩耗性、樹脂離形性を良くして射出成型寿命を格段に向上させました。
DLCそのものの安全性に関しては、変化を及ぼすことはありません。安全性を示す、MSDS制度では政令で第1種指定化学物質354種と第2種指定化学物質81種、計435物質が指定されていますが、本DLCは固形物で大気中や水中に溶出することは無く、MSDS制度適用外物質です。 参考のために主成分が炭素(黒鉛)の製品安全データシートを以下に示します。 下記の表からも判るように、炭素(黒鉛)は非常に不活性であり、人体の主要な抗生物質であり、無害なものであります。